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日本語教師3.0

「授業の質は上げる」「仕事の量は減らす」「両方」やらなくっちゃあならないってのが「教師」のつらいところだな 覚悟はいいか?オレはできてる

拝啓スリーエーネットワーク様 『新日本語の基礎』文法解説書の日本語版を出してください

 おはようございます。日本語教師ブロガーのNicky(@JPT407)です。 

 

 昨日、この記事を書いていて、ふと『新日本語の基礎』文法解説書のことを思い出しました。

jpt407.hateblo.jp

 

 それは、以前海外で教えていたとき、『新日本語の基礎』の文法解説書を参考にしていたからです。

  

『みんなの日本語』関連の出版物の整理

 新しい先生も見ていらっしゃると思うので、ちょっと解説すると、『新日本語の基礎』というのは『みんなの日本語』の基礎になった教科書です。技術研修生のために書かれたのが『新日本語の基礎』で、それを一般向けに書き直したのが『みんなの日本語』です。『みんなの日本語』の「まえがき」を見ると、そのへんの事情が書いてあります。

 さらに、『新日本語の基礎』と『みんなの日本語』には、教師向けや学生向けの本もいっしょに出版されています。これを整理すると、以下の表のようになります。

 

スリーエーネットワークの教科書

  このうち、教科書と『教え方の手引き』は、持っている教師も多いと思いますが、『翻訳・文法解説』を自分で持っているという教師の方は少ないと思います。

 なぜなら、これは学生向けに、学生の母語で書かれているからです。

 

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 逆に言えば、翻訳・文法解説には、日本語版だけがありません

 たぶん、スリーエーネットワークも、「教師には『翻訳・文法解説』を見る必要はなく、『教え方の手引き』を見るだけで十分」と考えているんだと思います。確かに、『翻訳・文法解説』には最低限の文法解説しか書かれておらず、『翻訳・文法解説』に書かれているような文法解説は、もっと詳しく『教え方の手引き』にも載っています。

 

 でも、『翻訳・文法解説』の日本語版がないのはすごくもったいないことだと思います。

 

 まず、『みんなの日本語』を使っている学校でも、『翻訳・文法解説』を学生に渡す学校と、渡さない学校があると思います。ですから、学生の全員が『翻訳・文法解説』を目にするかどうかは私もよくわからないんですが、個人的な感覚からいえば、かなり高い確率で目にしているように思います。 

 というのは、学生は母国で『翻訳・文法解説』をすでに買っていたりするからです。

 

 学生の大部分が『翻訳・文法解説』を目にしているということを前提にすると、教師の側も『翻訳・文法解説』に目を通しておいたほうがいいのではないかと思います。

教師も『翻訳・文法解説』を見ておいたほうがいい理由 

理由①「教師と学生の間の齟齬がなくなる」

 まず、あってはならないことですが、「教科書が教えたいことと、教師が教えたいことが一致しない」という問題が発生することがあります。

 もちろん、『教え方の手引き』を見れば、このような問題は回避できます。ただ、『教え方の手引き』って、その課で教えるべき内容の他に、具体的なプロセスなどの説明がたくさん入っていて(そのほうがメインです)、「何を教えるべきか」というのが分かりにくいです。

 一方、『翻訳・文法解説』は学生向けなので、「これだけ勉強すれば大丈夫」という内容しか入っていません。当たり前ですが、「それをどう教えるか」などの無駄な情報は入っていません。だから、教師にとっても、「翻訳・文法解説」はポイントが整理されていて、非常にわかりやすいです。

 

理由②「教師の教えすぎ、もしくは不足がなくなる」

 まず、「教えすぎ」の問題のほうがよく起こると思います。というのは、新人は情報を取捨選択できないからです。新人には、「何が大事で、何がそれほど大事ではないのか」というのがよくわかりません。しかし、「教え方の手引き」は、それほど大事ではないことまで網羅されています。これはおそらく、「よくできる学生から質問が出た場合、どう答えるか」を想定されたものであり、最初から全てを教える必要はないと思います。一般の文法書ならなおさらで、初級の学生が知らなくてもいいものまで網羅されています。

 もちろん、情報が詳しいことは悪いことではないのですが、教えすぎると学生が消化不良を起こします。今まで50の内容しか教えていなかったのを、100教えるようになったら、学生の理解も2倍になるかといえば、決してそうではありません。むしろ、私の経験からいえば、「細かい知識を教えたら、学生が細かい知識で引っかかってしまい、それについての質疑応答で時間がとられ、逆に大事なポイントがぼやけてしまった」ということが多いです。

 ですから、教師は「あれもこれも覚えてほしい」という欲求をぐっとこらえて、「これだけは覚えてね」と教える内容を絞ったほうがいいのですが、新人の時代は、何が大事で、何が大事じゃないか、わからないですよね?

 実際、「私も『教え方の手引き』にこう書いてあるんですが、どう教えればいいでしょうか?」と質問を受け、見たら説明が非常に難しい上、そんなに重要な問題ではなかった、という経験があります。語彙Aと語彙Bがどう違うか、という問題ですが、たとえ使い方を間違ったとしても、十分理解できるうえに、もし教師の説明で学生が理解できず、質問が出た場合、その質疑応答だけでかなり時間を食ってしまいそうです。無責任なようですが、私なら無視します。

 

  だから、理想を言えば、

1.まず手引きでだいたいの方向性を決め

2.一般の文法書を調べて、学生からどんな質問が出てもいいように理論武装したうえで

3.文法解説を見て、教えたいポイントを絞る

というのがいいように思います。

 

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 授業で教える範囲は、「翻訳・文法解説以上、教え方の手引き以下」がいいように思います。翻訳・文法解説と同じなら、学生は「本に書いてある内容と同じなら、わざわざ授業に出る必要はない」と思うでしょうし、教え方の手引きと同じなら、教えすぎになるような気がします。

 

あえて『みんなの日本語』の『翻訳・文法解説』ではなく、『新日本語の基礎』の『文法解説書』を推す理由

 ただ、もし日本語版を出すなら、『みんなの日本語』の『翻訳・文法解説』ではなく、あえて古いほうの『新日本語の基礎』の『文法解説書』のほうがいいだろうと思います。

 

 私は、海外にいたころは、実は『新日本語の基礎』でもなく、『みんなの日本語』ではなく、『みんなの日本語』のパクったオリジナルの教科書を使っていました。

 しかし、『新日本語の基礎』、『みんなの日本語』、『私が使っていた教科書』の三者がほぼ同じだったため、『新日本語の基礎』の『文法解説書』を活用していました。

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 私は今、日本で『みんなの日本語』を使っていて、もちろん『翻訳・文法解説』も持っていますが、正直『新日本語の基礎』の『文法解説書』のほうが、詳しくてわかりやすいと思います。

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 「~は~が」文の説明なんですが、『みんなの日本語』の『翻訳・文法解説』や『教え方の手引き』では、9課で扱う「好きです」、「嫌いです」、「上手です」、「下手です」、「わかります」、「あります」しか出てきません。

 一方、『新日本語の基礎』の『文法解説書』では、他の課の内容もまとめて整理されています。

 

 もちろん、9課の段階で学生に13課や18課、20課の内容を提示する必要はないのですが、教師として、「この課とこの課が、実はつながっている」と知っておくことは、非常に大事だと思います。もちろん、これは初級の間だけではなく、「初級のこの文型は、中級でこう発展する」とか、「中級でよく似た意味の○○という文型が出てきて、それは初級の文型とはこう違う」とか先に教師が知っておくと、初級の教え方も変わると思います。

 

 あと、『新日本語の基礎』の『文法解説書』で秀逸なのが後ろの助詞の解説です。

 

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 私は、『みんなの日本語』の弱点というか盲点は、実は助詞じゃないかと思っています。あんなに大事なのに、助詞だけで独立した課がありません。出るたび出るたびに一つ一つ教えるんですが、バラバラなので学生は結局「わかったような、わからないような」気になっていることが多いです。昨日の記事に書いた「に」と「で」の違いもそうですね。

 それで、よく助詞についての質問が出るんですが、助詞の質問は答えにくいです。まず、『みんなの日本語』では、『翻訳・文法解説』にも、『教え方の手引き』にもまとまった解説がありません。もちろん、文法書を調べれば、助詞の解説は簡単に見つかりますが、それは日本人向けの説明です。それを初級の学生向けにかみ砕いて説明するのは難しいです。そこが教師の力量と言われればそこまでなんですが。

 

 私が海外にいたころは、この『新日本語の基礎』の『文法解説書』をそのまま使って説明していました。たとえ直接法であっても、この内容が使えれば、とても役に立つと思います。

 

 というわけで、もう2017年ですが、スリーエーネットワーク様には、『新日本語の基礎』文法解説書の日本語版を出してほしいと思います。

 

 では、また!

 

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