ブログは日本語教師の歩く鏡である

「授業の質は上げる」「仕事の量は減らす」「両方」やらなくっちゃあならないってのが「教師」のつらいところだな 覚悟はいいか?オレはできてる

教師たるべきもの、一度は読んでおくべき教え方の技術の本

 昨日、日本語教育能力検定試験を受けると書いたんですが、実は検定試験の内容はあまり実践には役立ちません。もちろん、役立つところもあるし、全ての内容は、知っておいたほうがいいことは間違いありません。ただ、正直教壇に立ってから一度も思い出したことがない知識もたくさんあります・・・。養成講座の先生すみません。

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  じゃあ、実際に役立った本は何かというと、『教え方の手引き』などのマニュアル本であることも確かですが、マニュアルに頼りっぱなしでは、成長はありません

 たとえマニュアル通りにやってうまくいったとしても、「どうしてそうなるのか」という理屈が分かっていなければ、マニュアルがない教科書は教えられるようにならないでしょう。

みんなの日本語初級I 第2版 教え方の手引き
 

 

みんなの日本語初級II 第2版 教え方の手引き
 

 

 結局、検定試験は基礎理論すぎて、どうやって実践に生かせばいいかわからないし、『教え方の手引き』は実践的すぎて、応用が利かない、ということです。

 

 その間を埋めるいい本はないかなと思っていたんですが、いい本がありました。

教師のための「教える技術」

教師のための「教える技術」

 

 

  正直、この本を読んで、目から鱗が落ちました。それまで、既存の教案などを参考にして、闇雲に教案を書いていたんですが、この本を読んで「教え方にもこんな理論があったんだ」と、納得して教案が書けるようになりました。

 

 まず、最初に「ガニエの9教授事象」なるものが紹介されています。

「ガニエの9教授事象」

  1.  学習者の注意をひく
  2. 学習の目標を知らせる
  3. すでに学んだことを思い出させる
  4. 新しい学習内容を提示する
  5. 学習のやり方を説明する
  6. 練習をさせる
  7. フィードバックを与える
  8. 学習成果を評価する
  9. 学習したことを他の場面にも生かせるようにうながす 

 当たり前のことじゃないかと言われるかもしれません。確かに、ベテラン教師なら、経験的に知っていることばかりです。『教え方の手引き』にもこの要素は入っているので、何も考えずにそのままにやればうまくいくのかもしれません。ただ、新人が、マニュアルがない教科書の教案を0から書くとしたら、きっと役に立つでしょう。

 

 この本によると、教える内容は、5つに分類されるそうです。

  1. 運動技能
  2. 知識獲得技能(宣言的知識)
  3. 問題解決技能(手続き的知識)
  4. 学習方略技能
  5. 態度技能

 このうち、日本語教師に最も関係が深いのは、2の「知識獲得技能」です。

 知識獲得技能の教え方は次のようになるそうです。

  1. 学習者に関係があることを示して、注意をひく
  2. すでに持っている知識を思い出させる
  3. それが誤った知識であれば、逆にそれを利用する
  4. 新しい知識を印象深い方法で提示する
  5. 折に触れて知識を整理して示すことで、体制化をうながす
  6. 新しい知識を他の知識と結びつけることで、精緻化をうながす

 「体制化」、「精緻化」などは検定試験の勉強で知っています(よね?)。ただ、それをどうやって実践に生かすかがわかりませんでした。

 

 この6件を、日本語教育に当てはめれば次のようになります。

「学習者に関係があることを示して、注意をひく」

「すでに持っている知識を思い出させる」

(命令形・禁止形の授業で)

「みなさん、町でこんなものを見たことがありませんか」

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 この間書いたこの記事も、実はこの二つを意識したものです。

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「折に触れて知識を整理して示すことで、体制化をうながす」

(た形の授業で)

「た形の変化は、て形の変化と同じです」

 

 こういう風に、各課の内容を理論に当てはめていけば、新人でもある程度質の高い授業ができると思います。

 

 その他の「運動技能」、「問題解決技能」、「学習方略技能」、「態度技能」の教え方も参考になります。

 特に、「運動技能」の「スモールステップの原則」と、「即時フィードバックの原則」は、何を教える教師でも知っておかなければならない、基本中の基本でしょう。

 「問題解決技能」の教え方は、基本的な問題はできるけれど、実際に運用できない学生を教えるときに必要です。

 「学習方略技能」は勉強のやり方を教える技能なので、やはり大事です。

 「態度技能」は、やる気がない学生にどうやってやる気を起こさせるか、というときに役に立ちます。新人だと、どうしても「勉強しなさい!」と怒ってしまいがちなんですが、これにも技術があるそうです。読んでみて、ベテランの先生のやり方と同じだったので、納得しました。逆に言えば、この本を読めば、新人でもベテランの先生との距離を詰められる、ということです。

 

 こういう理論は、インストラクショナルデザイン(教え方のデザイン)」と言うそうです。教育学部の人にとっては常識なのかもしれませんが、私は専門外なので、全然知りませんでした。

 検定試験でも、あるていどこの方面の知識は勉強しますが、ここまで実践的でも、詳しくもありません。

 

 とにかく、今までベテランの先生を見てきて、長年経験を積むことでしか得られないと思っていた技術や知識が、実はすでに簡潔にまとめられていて、新人でも簡単に学ぶことができる、ということに驚きました。もっと早く知っておけばよかったです。

 

 インストラクショナルデザインの本は、この本だけでなくいろいろ出ているので、Amazonで「インストラクショナルデザイン」を検索してみるといいですよ。

 

 では、また。