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日本語教師3.0

「授業の質は上げる」「仕事の量は減らす」「両方」やらなくっちゃあならないってのが「教師」のつらいところだな 覚悟はいいか?オレはできてる

未習語彙の扱いをどうしていますか?

語彙 初級

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 こないだのシラバス論争の話から、また思いついたので書きます。いわゆる「未習語彙」、あるいは「語彙コントロールティーチャートークと呼ばれるものについてです。

 

 一般的に、『みんなの日本語』に代表される文型積み上げ式と呼ばれる教授法では、授業の中で、その課までに出てきた語彙と文型だけしか使ってはいけないことになっています。

 その段階でまだ勉強していない単語は「未習語彙」と呼ばれ、未習語彙や未習文型を使わないように話すことを「語彙コントロール」、「ティーチャートーク」と言います。

 

 養成講座でも、語彙コントロールは厳しくチェックされました。模擬授業で、「○○という単語はこの課ではまだ勉強していませんね」などなど。

 

目次

  

なぜ未習語彙を使ってはいけないのか

 では、なぜ未習語彙を使ってはいけないのでしょうか?

 それは、学習者が理解できないからです。

 教案を書く上で、もう1つ気をつけることがあります。これは直接法で授業をする上で最も大切なことなのですが、教師が話す言葉の中に、未習の語彙・文型が使われていないかを確認するということです。なぜこれが重要かというと、新しい言葉を説明するときに、説明に使われている言葉がまた新しい言葉だったら、学生はいくら説明を聞いても意味が分からないからです。「複雑」という単語の意味を、「いろいろにからみ合って入り組んでいること」と説明しても、「からみ合う」や「入り組む」の意味を学生が知らなければ説明にならないということです。 

教案で未習語がないか確認する – 日本語で国際交流

 

 しかし、私はあえて、未習語彙を使うこともあります。 

 

あえて未習語彙を使う意味

  確かに私も、昔は語彙コントロールにこだわっていました。そうしないと、学生が困ると思っていたからです。しかし、今はいくつかの理由から、あえて未習語彙を使うこともあります。

 

理由1 予定調和の授業はつまらない

 昔、海外で教えていたころ、妻が私の授業に出たことがあります。その時、「あなたの授業はつまらない」とはっきり言われ、大げんかになりました。

 妻がつまらないといった理由は、私が教科書通りに教えていたからです。妻に言わせれば、「もし授業が教科書通りなら、授業に出る意味がない。教科書の単語以外にも、学生が知りたい単語を教えるべきだ。」だそうです。

 私は、「そんなことをすれば、学生の負担が大きくなる」と言ったのですが、妻は「もし負担になるなら、覚えなければいいだけだ」と譲りませんでした。結局、学習者の立場から、妻の言うことを尊重して、未習語彙も教えてみることにしました。

 そうすると、学習者の態度が変わりました。未習語彙だけは一生懸命ノートにとります。それはそうですよね。教科書に書いていない単語なんだから。そして、そこから雑談に発展して、クラスに活気が出るようになりました

 それまで、私は教科書通りに、スムーズに進む授業がいい授業だと思っていました。しかし、未習語彙を使ってみてわかったことは、「少し脱線したほうがいい授業だ」ということでした。教科書通りに進んでいたとき、つまらなさそうにしていた学生が、脱線したとたんにまた授業に参加し始めるということも体験しました。つまり、学生にとって予想外の内容を入れることで、授業を聞かなければならないという気にさせるわけです。

 それ以来、私はわざと導入の例文をすべて完成させないようにしました。そうすると、学生が作ったおもしろい例文(もちろん未習語彙が入ることもあります)で、学生の興味を引き付けることができるからです。

 私は、自分の授業に、教科書以外の「おまけ」をつけて、お得感を出したいと思っています。それが未習語彙です。「学生が教室の外で耳にして、興味のある単語」などはだいたい未習語彙です。

 だから、ある意味矛盾した言い方ですが、計算しつつ脱線して、未習語彙も使っています。 

理由2 語彙コントロールが厳しすぎると、学生のやる気の芽を摘んでしまう

 これは、教師自身というより、学生の発言についてです。学生が未習語彙を使うと、「勉強した言葉だけを使いましょう」と言う先生がいらっしゃいます。確かに、よくできる学生は、自分が覚えた知識をひけらかすのが好きで、そういう学生を放っておくとずっとしゃべったままになり、他の学生が「あいつは何をしゃべっているんだ?全然わからない。」と不満を持ってしまいます。

 しかし、そういう学生というのは、教室の外でも自分で単語を覚えているわけですから、「未習語彙はダメ!」と言ってしまうと、その学生のやる気の芽を摘んでしまうような気がします。

 一方的に説明して、ずっと吸わせているような状態は、特に大人相手に教える際には避けるべき行為です。大人は経験があり、自分なりの考えを持っているわけですから、それを尊重せず、こちらのやり方だけを一方的に「吸わせよう」とすると反発されるのです。大人ですから、それを表には出さないかもしれませんが、私たちの説明を聞きながら「そんなやり方より、自分が考えているやり方のほうがよい」「とりあえず、聞いているふりをしておこう」と聞き流されているかもしれません。
 そんな大人に納得して、説明を受け入れてもらえるように、本人なりの考えを言わせます(吐かせる)。その上で、私たちの説明を聞かせて、(吸わせて)、最後に理解度や本人のやり方を聞く(吐かせる)というのが、大人相手の説明には必要なのです。
(P85)

 

オトナ相手の教え方

オトナ相手の教え方

 

  以前も引用しましたが、この考え方が参考になると思います。

 

 未習語彙を禁止すると、やる気のある学生の不満がたまります。しかし、そのまま放っておいても、周りの学生に不満がたまります。

 どうしようかなと考えていて、「シェア」ということに思い至りました。シェアというのは、普段SNSでやっているように、「こんなおもしろいアイデアがある」とみんなと共有することです。

 具体的には、よくできる学生が未習語彙を使ったら、「今○○さんがおもしろいことを言った」と言って、黒板に板書します。そして、その学生に、意味を説明させます。そうすれば、できる学生のプライドも満たされるし、他の学生のわからないという不満も解消されるし、一石二鳥です。

 

理由3 完全に語彙コントロールしてしまうと、知らない単語を推測する力が育たない

 これは、初級より中級で大事になるところだと思います。

 

 最近やっと思い至ったことですが、ネイティブでもすべての単語を理解して、読んだり聞いたりしているわけではありません。必ず知らない単語があって、それでも文脈から推測しながら読んだり聞いたりしているわけです。

 その、「知らない単語を推測する力」も大事なのではないかと思い始めました。というのは、中級の一部の学習者に、「(教材ではない)普通の日本人向けの小説やニュースを読んだり聞いたりしなさい」と言っても、「単語が難しすぎて無理です」と言うんですね。そういう人たちは、たぶん日本語の授業の中で、辞書で知らない単語を調べながら読むことに慣れてしまって、わからないまま読み進める、ということが恐怖になっているのだと思います。当然読むのは遅いです。これは、初級で未習語彙を使わないようにしようと、過保護にしすぎた結果かもしれません。

 それはいかんなあと思って、最近は中級の読解の授業では、わざと「一回目は辞書を引かずに読んでください」と言っています。一部の意味がわからないまま、推測しながら読み進めるという体験をさせたいので。

 

 まあ、これは自分なりの考え方なんですが、最近読んだ本にも似たような内容が出てきて、意を強くしました。

 私の授業では、わからない単語が出てきても辞書を引く生徒の姿は見られません。みんなが会話をしながら授業を進めているので、「えーっと、何て言っているのかな・・・(パラパラ)」なんてやっている暇はないから。それでも生徒たちは、なんとなく「こんなことを言っているのかな?」と推測しながら話を聞いています。

 

 この「推測する」ということが、「使える英語」にはとても重要。

授業でもその仕掛けをいろいろなところに施しています。

(中略)

 ここで、生徒たちは辞書を引かずに理解するための3つのことを、無意識のうちに行っています。

 1つ目は、写真などの視覚的情報から推測すること。

 2つ目は、周囲の人から情報を得て推測すること。

 3つ目は、自分自身の知識を増やすこと。

 これは、英語に触れるあらゆる場面で有効な方法です。

 

 

  まあこれは、自分なりの考え方だったんですが、さっき記事を書こうと思ってインターネットを検索したら、すでに村上吉文先生(@midogonpap)が、すでにブログで書いていらっしゃいました。

mongolia.seesaa.net

mongolia.seesaa.net

 

 Twitterでもアンケートを取られていて、「未習語彙を使うべきではない」という日本語教師は、なんと0%だったそうです。

 

 この記事を書くのは遅すぎたかもしれません・・・。

  

 ちなみに、村上先生は、こないだのシラバス論争でもいろいろ教えてくださいました。

togetter.com

 

 まとめ

 以上のような理由から、私はわざとときどき未習語彙も入れていますが、これが正しいかどうかはわかりません。ひょっとしたら、学校の先輩教師にここが見つかったら、怒られるかもしれません。

 あくまで、参考にとどめておいてください。

 では、また。

 

  ちなみに、『みんなの日本語』で未習語彙をチェックしたい場合は、このサービスを使ってください。

jpt407.hateblo.jp