ブログは日本語教師の歩く鏡である

「授業の質は上げる」「仕事の量は減らす」「両方」やらなくっちゃあならないってのが「教師」のつらいところだな 覚悟はいいか?オレはできてる

コミュニケーション力を育てる活動型クラスを始めるにあたって、参考になる本

 こんにちは。日本語教師ブロガーのNicky(@jpt407)です。

 

 こないだ、こんな記事を書きました。

jpt407.hateblo.jp

 

 その中で、私に衝撃を与えた早稲田大学の「活動型クラス」について、参考になりそうな本を2冊見つけたので、ご紹介します。

 

 まず、「活動型クラス」について、私なりの理解を整理しておきます。まず、文法中心の「普通のクラス」(下の本では「教科書クラス」と呼ばれています)の授業は、「導入→説明→練習→活動」の順番で進みます。一方、これが逆になり、「活動→(必要があれば)文法、語彙の説明」になるのが「活動型クラス」だと思っています。

 もしこの理解が間違っていたら、訂正してください。

 

 「何にも教えていないのに、活動も何もできるわけないだろう」と思われるかもしれませんが、私はこれ、実は合理的なんじゃないかと思い始めています。

 というのは、「普通のクラス」では、学習者側には特に表現したいことがないのに、いきなり教師にこの文型や語彙を覚えろ!と言われるわけです。学習者にとっては、その文型や語彙の必要性が分かりません。

 ところが、「活動型クラス」では、「これが言いたいのに言えない!」という体験が先にあって、それを解決する形で文型や語彙を導入するわけです。

 どちらのクラスで文型や語彙を学ぶ必要性を感じるか、言うまでもないでしょう?このことについては、また記事を改めて書きます。

 

 まず、初級向けのこの本です。

『初級から始まる「活動型クラス」』

初級からはじまる「活動型クラス」-ことばの学びは学習者がつくる-『みんなの日本語』を使った教科書・活動型クラスを例に

初級からはじまる「活動型クラス」-ことばの学びは学習者がつくる-『みんなの日本語』を使った教科書・活動型クラスを例に

  • 作者: 細川英雄,武一美,金龍男,坂田麗子,村上まさみ,森元桂子
  • 出版社/メーカー: スリーエーネットワーク
  • 発売日: 2012/05/23
  • メディア: 単行本
  • 購入: 1人 クリック: 2回
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 この本は、早稲田大学の先生が書いているので、おそらく私が読んで衝撃を受けた記事とほぼ同じ内容だと思います。 

 こんな状況の中でその人は学生に日本語でじわじわと問いを投げかけ、学生はその人から発せられる小さな声に耳を傾けていた。そのうち学生はぽつぽつと話し始め、半期後の授業が終わる頃には自分の考えていることを結構自由に話すようになっていた。その人は周到に準備され、計算され尽くされた「マジック」ではなくて、いつもと全く変わらない自分のふるまいだけでここまでの「学習成果」を出した。

storys.jp

 

 薄い本なので、買って2,3日で読んでしまいました。本当に素晴らしいです。

 

 この本は、ひらがなとカタカナは学習済みの初級前半の学習者を想定し、自己紹介と3つのトピック、文集の作成という活動で活動型クラスを進めていきます。『みんなの日本語Ⅰ』を使った教科書クラスと、活動型クラスを同時に進めていく15週間のシラバスが紹介されています。

 

この本の長所を列記します。

長所1 『みんなの日本語』と併用できる

 おそらく、国内の日本語学校では、『みんなの日本語』のシェアが圧倒的だと思います。私もこれを使っています。確かに、非常に使いやすい教科書ではあるのですが、同時に、「なかなかコミュニケーション能力が育たない」という不満を持っている先生方も多いと思います。この本は、まさにそういう教師の不満を解消しうる可能性を持っていると思います。

 

長所2 普通のクラスと並行して、活動型クラスを始められる

 とはいえ、いきなりすべての授業を活動型クラスに切り替える、というのは無理だと思います。国内の日本語学校の多くは、予備校的性質を持っているので、責任重大です。「教科書と教育方針を変えてみたけどダメだった」では、その期の学生に対する責任がとれません。

 その点、この本は、「普通のクラスと活動型クラスを並行する」という方法を採用しているので、比較的リスクを減らしながら活動型クラスを導入できると思います。

 

長所3 何より初級である

 実は、中級以上のクラスで活動型クラスを行うのは、それほど難しいことではありません。ある程度の文型と語彙の蓄積がありますから。しかし、学習者が何も知らないゼロ初級で、いきなり活動型クラスをやるのは難しいです。私も正直、そんなことは不可能だろうと思いました。

 しかし、この本には、ゼロ初級にあたる『みんなの日本語Ⅰ』第1課から、『みんなの日本語Ⅰ』終了までの活動型クラスが、シラバス、教案など詳しく説明されています。活動型クラスを全くやったことがないという人でも、この本を参考にすれば、ある程度できるはずです。

 

長所4 コミュニケーション力が育ちそう

 活動型クラスは、最初から学習者どうしのコミュニケーションなので、コミュニケーション力が育ちそうです。こないだもこんなことを書いたのですが、中級になっても本当に話せない学生を見て、自分の教え方のどこが悪かったのか反省している毎日です。

『みんなの日本語 初級』のような文型シラバスの教科書に沿って教えた場合、授業はどうしても文型を積み上げていく形になってしまいます。教科書に出てくる文型をその順番で教え、そこに出てくる練習問題も教室ですべてしなくてはいけないと考えていないでしょうか。それを続けていくと「文型だけは山のように勉強したけど、実際に話したくても、どの文型を使えばいいかわからない」といった文型とそれを使う場面が結びつかない結果となってしまいます。

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日本語教師のためのCEFR

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  活動型クラスは、解決策の一つになりうるかもしれません。

 

長所5 たとえ活動型クラスをやらなくても役に立つ

 この本で紹介されているやり方は、活動型クラスでないクラスでも、非常に役立つと思います。たとえば、自己紹介は必ずやることですが、この本では、実に5コマが費やされています。「自己紹介だけで5コマ持つのか?」と思われるかもしれません。私もそう思いました。しかし、もちろん普通の自己紹介ではなく、お互いにコミュニケーションしながら、自己紹介を深めていく、という方法が採られています。

 さらにレベルが高くなるトピック1,2,3などでは、さらに丁寧な授業が行われます。例えば、トピック3では、作文を全員分コピーして、「音読→黙読→語彙や文法の確認→感想やコメントのやり取り→作文の書き直し」というプロセスが行われます。さらに、これを全員の作文に対して行います。

 もちろん、時間の制限もあり、これをそのまま自分の授業に取り入れるのは無理です。しかし、このプロセスは作文の授業の参考にできます。

 

  私もこの本を読んで、ちょっと活動型クラスをやってみようかなと思い始めました。もちろん、学校のシラバスはすでに決まっていて、それは動かせないのですが、本来のシラバスの内容を詰めて、1週間あたり1,2時間浮かせて、同じようなことができないかなと考え中です。

 

 巻末には、学習者に対するインタビューも収録されています。私もそれを読んで、文法中心の「普通のクラス」だけではなく、「活動型クラス」も必要なのではないかという思いをますます深めました。

 

学習者Eさん、学習者Wさんのインタビュー

T:活動型クラスと教科書クラスを受講してみた感想は?

W:私は読むことがあまり好きじゃないので、教科書クラスはあまり合わないと思います。インタラクティブに話しながら理解するほうなので、活動型クラスのほうが向いていると思います。

 

T:教科書クラスの長所、短所は?

E:教科書クラスは、自分にどれだけ力がついたかがわかりやすいです。スケジュールが決まっているので、それに沿って進むのは安心ですが、ときどき学習者の状況と合わないことがあります。

 

T:教科書クラスと活動型クラスの両方を受講することについて、どう思いますか。

E・W:両方を同時に受講するのがいいと思います。

W:文法や漢字の知識は必要で、特に長い文を書くときに重要になってきますから。

E:ただ、活動型クラスで話をしてから、その時に必要な文法を教科書クラスで学ぶというのがいいと思います。まず文法の学習をして、それを使って話すという方法では、うまく話すことができないと思います。

 

学習者Jさん、学習者Yさんのインタビュー

T:教科書クラスと活動型クラスを同時に受講することについて、どう思いますか。

J:教科書クラスでは、たくさんの文法と語彙がインプットされるけれど、実際に使わないと忘れてしまいます

Y:教科書クラスで覚えた言葉を活動型クラスでの話し合いや作文で実際に使うことで、使い方や意味もよくわかるようになるし、忘れないと思います。 

 

 ただ、「活動型クラス」だけでもダメで、両方をバランスよくミックスすることが必要だと思います。これについても、また記事を改めて書きます。

 

 ただ、気になっている点は、この活動型クラスが10人までの少人数クラスを想定されている、という点です。もちろん、20人のクラスでも、グループに分ければ実践できなくはないはずですが、コントロールが難しそうです。

 

 『日本語教師のための「活動型」授業の手引き』

日本語教師のための「活動型」授業の手引き―内容中心・コミュニケーション活動のすすめ

日本語教師のための「活動型」授業の手引き―内容中心・コミュニケーション活動のすすめ

  • 作者: 津村奈央,塩谷奈緒子,市嶋典子,武一美,須賀和香子,細川英雄,蒲谷宏
  • 出版社/メーカー: スリーエーネットワーク
  • 発売日: 2008/12/01
  • メディア: 単行本
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  これも、早稲田大学の先生が書いた本です。レベルは初級から上級まで対応しています。

 

 この本は買ったばかりでまだ読んでいません。

 

 ただ、1冊目より詳しく、ワークシートも添付されているので、参考になりそうだと感じました。これもそのまま自分の授業に導入することは無理ですが、部分的に導入して、授業の質を改善したいと思います。いい本です。

 

 しかし、残念ながらおそらく絶版になっているようで、Amazonでは中古が6,535円、新品が17,072円というとんでもない値段がついています。私はたまたま運よく本屋で買えましたが、見かけたらすぐ買うことをお勧めします。

 

 それでは、また!