日本語教師3.0

「授業の質は上げる」「仕事の量は減らす」「両方」やらなくっちゃあならないってのが「教師」のつらいところだな 覚悟はいいか?オレはできてる

文型シラバスしか知らない日本語教師が、文型シラバスとタスクシラバスについて適当にいろいろ書いてみる

 最近、Twitter上で、『みんなの日本語』vs『まるごと』みたいな論争が始まり、私もそれにちょっと乗っかって書いてしまったので、責任を取って自分なりの考え方を書いておきます。

 

 

目次

 

私のバックグラウンド

  まず、私のバックグラウンドを書いておきます。『みんなの日本語』を使い始めたのは去年からですが、その前はずっと、『みんなの日本語』のパクりみたいな教科書を使っていました。たぶんみなさんが知らない教科書です。『まるごと』と『できる日本語』は、参考のために買いましたが、使ったことはありません。つまり、使ったことがあるのは文型シラバス型の教科書のみです。

 

 なので、これから書くことは、あくまでも適当な意見です。特に専門的な理論や用語などは間違っているところも多々あるかもしれませんがすみません。

 

みんなの日本語 初級I 第2版 本冊

みんなの日本語 初級I 第2版 本冊

 

 

  

できる日本語 初級

できる日本語 初級

 

  

文型シラバスvsタスクシラバス論争の始まり

 Twitterをしていない方には話の流れが見えないと思うので、簡単に説明します。

 もともと、一部の日本語教師の方々が、Twitter上で『みんなの日本語』に代表される文型シラバスは古いと発言していて、それには私も含めていろいろ不満があったんですが、こないだのこのwebjapanese.com(@webjapaneseJ)さんの一連のツイートをきっかけに、いろいろな人が発言を始めました。

 

 Twitter上の議論については、こちらにまとめました。できるなら、この記事を読む前に読んでおいてください。

 

togetter.com

 

90%以上の教師は、教科書を選べない

  誤解してほしくないんですが、私は『みんなの日本語』、そして文法シラバスの擁護者ではありません。タスクシラバスのことはよく知りませんが、やってみたいと思っています。決して、自分がいいと思ったから、『みんなの日本語』を使っているというわけではありません

 単に、勤務先の学校が『みんなの日本語』を使っているから、『みんなの日本語』を使っているというだけです。仕事ってみんなそんなものでしょう?例えば、『餃子の王将』に勤めている料理人が、「こんなもの、本物の中華料理じゃない。俺は本物の中華料理を作るんだ。」と一人別のメニューを作り始めたらどうなりますか?

 もちろん、日本語教育の専門家がおっしゃっていることはよくわかります。国内の日本語学校の教育は、古くて、世界の潮流からは取り残されているのかもしれません。特に、ヨーロッパで教えている日本語教師が、日本の教育を見たら、「こんなものは本当の語学教育じゃない」と思われるのも当然でしょう。それは、中国人が「餃子の王将」に入って、「こんなもの、本物の中華料理じゃない」と思うのと同じだと思います。

 ただ、たとえ本物でなくても、それを求めている人が多いのは確かです。本当は、試験の形式がおかしいんだと思いますが(後で書きます)。そして、教師はそのニーズに対応しなければなりません。

 たとえ本物の中華料理にそんなものはないとわかっていても、王将の料理人はニンニク入りの餃子や、天津飯を作らなければならないんです。そうでしょう?

 本当は、私も直感的に、タスクシラバスのほうが優れているんじゃないかとは思っています。ただ、組織内で私だけ勝手な行動をとるわけにはいきません。現場の教師なら、多かれ少なかれ、理想と現実の間の矛盾に悩んでいると思います。

 

 しかし、『みんなの日本語』批判でいちばんカチンときたのは、「勉強不足だから『みん日』を使っているんだ」みたいな言い方です。それは全くアンフェアなものの言い方です。ひょっとしたら、よく勉強していて、タスクシラバスを使いたいのに、学校の方針で使えない教師もいるかもしれません。あるいは、とにかく目の前の学生の成績を上げるために、他の教材の研究を封印して、ひたすら『みん日』だけを研究している教師もいるかもしれません。そういう教師がインターネット上で『みん日職人』と馬鹿にされているのを見たことがありますが、私はそれも立派な教師の姿だと思います。だって、教師にとって一番大事なこととは何ですか?自分自身の成長ですか?学生の成長でしょう!他の教材や教授法を研究して、それが学生の役に立つならいいですが、もし使えないというのであれば、あえて勉強しないで、目の前の教材に集中するというのもアリだと私は思います。

(後でご本人から訂正があったのですが、当該のツイートは、文型シラバスに疑問を感じていない教師を念頭に置いたものだそうです。すみません。訂正します。) 

 

 ツイートにも書きましたが、おそらく、日本語学校に勤めている教師の中で、90%以上の教師には教科書を選ぶ権限はありません。自分の考えがどうであっても、与えられた教科書でやるしかないんです。それどころか、教科書を選ぶ権限がある教師ですら、安易に教科書を変えられません。だって、留学生は進学のために日本へ来ています。大げさに言えば、学生の人生がかかっているのに、そんな簡単に「こっちのほうがよさそうだから」で変えられるわけがありません。

 

 

文法シラバスの欠点は、「話せない」こと

  それはさておき、『みん日』と文法シラバスに対する批判には、私も同意します。『みん日』と文法シラバスに対する批判でいちばん多いのは「話せない」ということです。

 これは私も体験しました。私の場合は海外でしたが、『みん日』とほぼ同じ教科書を終わって、「先生、この文型はどこで使うんですか?」と聞かれたときは愕然としました。まあ、それは私の当時の教え方が悪かったせいもありますが。

 もっと極端な例で言えば、「1年で日本語能力1級(そのころはまだ級でした)がとれる」というのがキャッチセールスの塾がありました。ただ、そこで勉強した人は、確かに1年で1級をとるんですが、話せないそうです。そういう塾が何をしているかというと、もちろん文型シラバスと、問題集の繰り返しですよね。よく『みんなの日本語』を「文型積み上げ式」と言うのですが、そういう塾のやり方はむしろ「文型詰め込み式」と言ったほうがいいと思います。そういうやり方が、非常に効率的であることは確かです。ただ、話せないのも事実です。

 

試験で点を取るなら、文法シラバスじゃないの?

 これはみんな共通した意見なんですが、試験、特に日本語能力試験を目標にするなら、やはり文型シラバスがいちばんの近道なんじゃないでしょうか。日本語能力試験はコミュニケーション能力と謳っていますが、結局語彙とか文法とか、知識を試す問題が大きなウェートを占めています。知識を試す問題に対応するには、文型シラバスで「効率的に」文型を詰め込んで、大量に問題集をこなすのが、やはりいちばんの近道なのではないでしょうか。

 もちろん、試験は受けないから、とにかく楽しく勉強したいという人には、タスクシラバスのほうがいいんでしょうが、能力試験を受けたい人にとっては文型シラバス一択じゃないかと思います。

 もし、能力試験対策でもタスクシラバスのほうが優れているという意見があれば、ぜひお聞かせください。

 

タスクシラバスのほうが楽しそう

 テストとか明確な目標がなくて、とにかく日本語を話したいという人なら、タスクシラバスのほうがいいと思います。

 文型シラバスみたいに、「○○形を覚えて、それから○○形を覚えて」、より、タスクシラバスの「友達を誘ってみよう」のほうが楽しいに決まっています

 シラバス自体の違いだけでなく、教科書も関係があります。以前、近くのボランティア教室で日本語を教えていたことがあります。その時、別のボランティアの人から、「初級の学生に『みん日』で教えているけど、つまらなさそうだ」という相談を受けて、紹介したのが『まるごと』でした。その学生さんは、『まるごと』が気に入ったみたいでした。その後、教室へ行っていないのでよくわかりませんが。

 そのボランティアの先生が言うことには、『まるごと』は写真とかたくさんあって、カラフルなだけでもいいのだろう、と。確かに『みん日』はお世辞にも上手とは言えないイラストで、2色刷りで、新しい話題もないし、ダサいということは否定できません。ビデオは逆にダサすぎて、ツッコミどころが満載というおもしろいところがあるんですが。『できる日本語』も、『まるごと』ほどではありませんが、イラストが豊富で、上手だし、いいですよね。

 

 自分自身の体験ですが、海外で教えていたとき、学生はほとんどが、ただ日本語に興味があるというだけで、留学などは目的としていない一般人、教科書は『みんなの日本語』のパクりみたいなテキストでした。

 正直、日本へ旅行に行きたいなどの動機から日本語を勉強したい人が、この教科書で勉強するのはつまらないだろうなあとは思っていました。ただ、いろいろな人が書いていますが、中華圏は講義スタイルに慣れているので、タスクシラバスにしたら、学生側が戸惑ったかもしれません。

 さらに、教科書に忠実に教えていた理由は、学校の体質にもあります。教科書は学校のオリジナル(パクりですが)で、教科書の売り上げも学校の収入になるので、学校は教師が勝手に自分で教材を使わないかどうか、非常に気にしていました。聞いた話ですが、自分で作った教材を配っていた先生の教室に突然社長が入ってきて、その先生をクビにしようとしたそうです。結局、学生が抗議して、クビはなくなりましたが、その話を聞いてから、学校既定以外の教科書を使って教えることはやめようと心に誓いました。

 他にも、教師が勉強会を作ったら、組合を作って賃上げ交渉するのではないかと誤解した社長が、勉強会を解散させたなど、いろいろ問題があるところでした。

 

タスクシラバスは、教師が大変そう

  特に、新人教師は大変そうです。

 なぜかというと、タスクシラバスでは、一つの課の中に、たくさんの文型が詰め込まれているからです。タスクとしては一種類なんだけど、その中にはいろんな文型が入っているので、教師は予習が大変だろうと思います。

 今、手元にある『できる日本語』の第1課「はじめまして」をめくってみると、学習項目は以下の通りです。

私は[名前]です

[国]人です

お国はどちらですか

お仕事は

[仕事]ですか

はい、[仕事]です

いいえ、[仕事]じゃありません

NのN

~歳です

いつ ~月~日

何ですか

NとN

Nも

  『みんなの日本語』だったら、だいたい第1課から第4課までの内容が、『できる日本語』では1課に詰め込まれているわけです。

 

 文型シラバスは、その点楽です。みんなの日本語』は一課あたりの文型が少ないので、予習する量が少なくて済みます。新人教師は、たとえ養成講座を修了していても、個別の文型についてはあまりよく知りません。『みん日』で教師デビューする人は、ほとんど何も知らないところから自転車操業で死にかけながら、「今日はこの課でこの文型をやって、次の授業は次の文型」みたいな感じで、教案を書いていきます。そして、1課から50課を順番に2周くらい繰り返せば、余裕ができるんだと思いますが、タスクシラバスでいっぺんにいろんな文型が出てきたら即死すると思います。

 しかも、「絵を見て自由に言ってください」だと、教えたい文型以外にも学生からいろいろ出てきて、文型シラバスより容易に脱線しそうです。タスクシラバスを教えるには、最初からすべての文型に対して知識があって、どんな質問が出てきても大丈夫、というベテランでないと大変そうです。

 

 あくまでも、タスクシラバスで教えたことのない人間の勝手な想像ですが。

 

タスクシラバスだと、上級文型を勉強しなさそう

 文型シラバスでも、「言えないことは言わない」、「今までに勉強したことがある、もっと簡単な文型を使う」という方法で、上級文型を使いたがらない学生がいっぱいいますが、タスクシラバスではそれがもっと深刻になるんじゃないでしょうか?

(それとも、タスクシラバスだと、それも「ストラテジー能力が高い」として評価するんでしょうか?)

 だって、タスクシラバスって「タスクが達成できればそれでいい」なんですよね?(間違っていたらすみません) それこそ、簡単な語彙と文型だけでタスクを達成して、「通じるからいいじゃないですか」と学生に言われたら、対応に困りそうです。文型シラバスなら、「今日は○○の文型の練習ですから、○○を使ってください」と言えるんですが。

 

 余談になりますが、『みんなの日本語』で「と」を教えていて、困ったことがありました。道案内の場面設定で、「道がわからなかったらどうしますか」と学生に聞いたら、「ケータイを見ます」と言われました(笑)。それだと、日本人に道を聞く必要が全くないので、教える側としては困るのですが、実際にはいちばん可能性が高い選択肢ですよね?仮に私が外国へ行ってもそうします。

 このように、現実の状況の変化によって、使えなくなる導入はますます増えていくと思います。

 

 以前、「ゆるゆる日本語教師 なにわ日記」さんでこんな記事もありました。

nihonngokyoushi-naniwanikki.blog.jp

 

 確か、他に「『できる日本語』で初級を勉強した学生の中級クラスを担当したけど、学生が初級の文型を全然覚えていないので困った」というような内容の記事があったんですが、見つかりませんでした。

 

学習者によってシラバスを決めるのは理想。でも現実には不可能

 Twitterでも、「学習者によってシラバスを決めるのが理想」だという意見がいくつかありましたが、少人数ならともかく、1クラス20人近く学生がいる日本語学校では、全員のニーズを調査してシラバスを決めるのは、なかなか難しいと思います。というより、普通の日本語学校は、学生が入学する前にすでにシラバスが決まっているんじゃないでしょうか?

 ただ、ある程度コントロールすることは可能だと思います。進学目的のコースと、遊学や短期留学目的のコースを分けて、進学コースは文型シラバス、遊学コースはタスクシラバス、というように。たぶんすでにそうしている学校もあるんじゃないでしょうか?

 

文法シラバスでも、授業内容はタスクシラバス? 

 これもTwitterで言っていた人がいるんですが、文法シラバスの教科書でも、必ずしも授業内容まで文型積み上げ式でやらなくてもよくて、タスクシラバスのいいところを柔軟に取り入れていけばいいと思います。

 幸い、今は「できる日本語」の「教え方ガイド」も市販されているので、それを参考にするのもいいと思います。

 

できる日本語 初級 教え方ガイド&イラストデータCD-ROM

できる日本語 初級 教え方ガイド&イラストデータCD-ROM

 

 

できる日本語 初中級 教え方ガイド&イラストデータCD-ROM

できる日本語 初中級 教え方ガイド&イラストデータCD-ROM

 

  私もこの2冊は買いました。ちょっと高いですが、『みんなの日本語』を使う教師にも参考になります。

 この本がいいのは、大量のイラストデータもついてくることです。イラストを手に入れるためだけでも、買う価値があると言っても過言ではありません。以前それについても書きました。

 

jpt407.hateblo.jp

 

jpt407.hateblo.jp

 

文法シラバスにタスクシラバスを取り入れるなら

  文型シラバスの欠点は、「勉強しても使えない」、「勉強した文型を、いつ使っていいかわからない」というところです。しかし、文型シラバスには、「文型を効率的に学習できる」という長所もあります。タスクシラバスの長所と欠点は、その逆です。

 以前からぼんやりと考えていたんですが、両者の長所を組み合わせればいいんじゃないんでしょうか?まず、文型シラバスで文型を勉強してから、タスクシラバスで復習して、定着を図るとか?

 『みんなの日本語』を5課か10課進んだところで、『できる日本語』の関連した課で復習するとか。

 あるいは、『みんなの日本語』しか使わないとしても、みんなの日本語の文型を機能ごとに整理して、たとえば「依頼の文型」で、「~てください」、「~ないでください」、「~ていただけませんか」などをまとめて復習するとか?

 

みんなの日本語』はレガシーシステムである

レガシーシステムとは?

 「レガシーシステム」というのは、IT分野で使われる言葉です。

 レガシーシステムとは、主にコンピュータの分野で、代替すべき新しい技術などのために古くなったコンピュータのシステムや技術などのことである。そのようなデバイスをレガシーデバイス、そのようなオペレーティングシステムを、レガシーOSなどともいう。

 レガシー(legacy)とは英語で資産・遺産という意味であり、レガシーシステムとは典型的には、まだユーザーが必要とする機能を持つが、現在可能な、より新しい技術やより効率的な技法ではないシステムのことである。

 

レガシーシステム - Wikipedia

 

 実は、私の昔の仕事はシステムエンジニアで、ちょうどレガシーシステムと、新しいシステムの両方を担当しました。その時も、「○○ってもう古いよね」、「これからの時代は××だよね」という人が多かったです。

 

 日本語教育におけるみんなの日本語』と文型シラバスも、レガシーシステムと思います。

 

 ただ、レガシーシステムが使い続けられるのには、それなりに理由があります。

 

レガシーシステムが使い続けられる理由

 最大の理由はこれだと思います。

 これこそ、レガシーシステムそのものの考え方だと思います。レガシーシステムという言葉は、悪い意味で使われることが多いんですが、もともとは「資産」という意味です。その資産が最大なのが、『みんなの日本語』です。

  

①文型シラバスのほうが教師が多い

 日本語教師は時給1500円以上が普通なので、時給が高いと誤解されることがときどきありますが、現実は全く逆です。それは、授業時間以外の労働に対して、全く報酬が支払われないからです。もし教案作成時間も計算に入れれば、日本語教師の時給は確実に最低賃金を下回ります。実質的な時給は500円以下になるのが普通じゃないかと思います。

 しかし、2回目の授業からは別です。すでに一度作った教案があるので、それを手直しするだけですみます。特に初級は、同じことの繰り返しなので、繰り返せば繰り返すほど、楽になります。

 今まで作った教案というのは、日本語教師にとっての資産であるわけです。

 

 しかし、新しい教科書になれば、話は別です。教案をまた一から作り直さないといけないので、新しい教科書に乗り換えるのは、今ある資産を放棄するのと同じです。ですから、私を含めて、おそらく多くの日本語教師は、教科書を切り替えることは面倒くさいと思うと思います。

 教案作成が面倒なだけならまだいいとして、シラバスが変わったら、今までの教え方がうまくいかない、ということも考えられます。以前インターネット上で見た話ですが、ある学校では、文型シラバスをタスクシラバスに変えたら、「この教科書では教えられない」とベテランの先生がやめてしまったそうです。

 新人でも同じです。基本的に、養成講座では、文型シラバスの教え方が多いそうです。養成講座では文型シラバスの教え方しか習っていないのに、職場でいきなりタスクシラバスで教えろと言われたら、きっと頭を抱えるでしょう。

 

 結論として、今までの日本語教育業界は文型シラバスに慣れ親しんできたので、タスクシラバスで教えられる人材は不足しているのではないかと思われます。

 

 これは私の推測ですが、日本語学校の教務にとってみれば、文型シラバスをタスクシラバスに切り替えようと思ったとき、まず「今までの先生が残ってくれるか」を考えなければならないでしょう。そして、「タスクシラバスを教えられる教師を揃えられるか」と心配しなければならないと思います。

 

 ちょっと関係ありませんが、おもしろい話を書きます。私は以前、地元のボランティアが運営する日本語教室に通っていました。そこに一人、日本語教師志望の若者がいました。大学院で日本語教育を専攻していたそうです。ほかのボランティアから聞いた話によると、彼は教科書を持たず、学生の興味に合わせて、学生が知りたいと思う日本語を教えていたそうです。そして、それが新しい教え方だと言っていたそうです。

 私は、これは確かに究極の教え方かもしれないと思う反面、これを学校で行うのは難しいと思いました。一連のツイートの中でも何度か出て来ましたが、確かにいちばんいいのは、まず教科書ありきではなく、学生のニーズに合わせてシラバスを組むことです。それが究極に達すると、教科書なしに臨機応変に教えるということになるのだと思います。『神鵰剣俠』の独孤求敗にしろ、『刃牙』の宮本武蔵にしろ、剣の達人がついには剣をも必要としなくなる、というのに似ていると思います。

宮本武蔵

 ただ、それは誰にでも真似できるものではありません。私も経験がありますが、教科書なしに授業をやろうとすると、結局グダグダのおしゃべりになってしまいます。

 教科書は、教師を縛るものであると同時に、教師をサポートしてくれるものだと思います。

 学校で、教科書なしでも教えられるような達人をクラスの数だけそろえるのは不可能でしょう。

 

②教材などのリソース面が充実している

 『みんなの日本語』って、あらゆる意味で「総合教材」だと思います。語彙、文法、音声、作文、ビデオ、教師向けの絵カードや指導書など、あらゆる本が揃っているからです。これによって、教師側の負担は大幅に軽減されます。たとえば、自分でプリントを作らなくても、何かしら使えるリソースがあります。それは教師側の都合だと言われてしまえばそれまでなんですが、現実問題、『みんなの日本語』を使っていてもこれだけ忙しいのに、他の教材に切り替えて、副教材も教師が自作するのはちょっと、いやかなり難しいと思います。

 

③教え方が確立している

 ①と関係しますが、みんなの日本語』は、教師にとって安心感があります。『教え方の手引き』がある上に、使っている教師が多いので、わからないことがあっても、簡単にほかの教師に質問できるからです。

 これがマイナー教科書だと大変です。以前、私は別の学校で、『みんなの日本語』でも『できる日本語』でもない、もっとはるかにマイナーな教科書を使ったことがありますが、その時は非常勤全員頭を抱えていました。

 これも教師側の都合と言われそうですが、教師側の都合も、結局は学生側の都合でもあると思います。たとえば、教師の準備時間が足りなかったり、教師自身が教科書をよく理解しないまま教えていたりしたら、学生にとっても困るだろうと思います。

 

 結局、いろいろなことを考慮すると、学校側がわざわざ文型シラバスをタスクシラバスを切り替えて、リスクを冒したくはないだろうな、ということが分かります。

 

結論

 これも私独自の意見ではないですが、国内の日本語学校シラバスを文型シラバスからタスクシラバスに変えようとすれば、まず日本語能力試験の形式を変えるというのが大前提になると思います。

 試験が変わらないのに、授業だけを変えたら、「試験で点が取れる授業をしてほしい」と、学生側から苦情が出るのは目に見えています。

 いや、「タスクシラバスでも文法ゴリゴリのテストで点は取れる」と言われるのかもしれませんが、少なくとも私は難しいんじゃないかと思います。

 

 第二に、タスクシラバスの利点と実践を、具体的に示してほしい、ということです。特に、実践の方法ですね。できれば、実際にタスクシラバスを使っている現場の教師の先生の報告がほしいです。

  そう考えると、以前投稿した「日本語教育クックパッド」があればいいなあと切に思います。

jpt407.hateblo.jp

  仮にあったとしても、企業秘密やなんやらで、自由に投稿できないのかもしれませんが、ないよりはあったほうがいいと思います。

 

最後に

 私も批判するばかりではいけないので、おすすめがあったこの本を買ってみました。これから、この本でタスクシラバスについて勉強をしようと思います。

日本語教師のためのCEFR

日本語教師のためのCEFR

 

 

 あと、日本語教育じゃないですが、この本も役立つんじゃないかと思っています。

 

「知識はあるのに話せない」を抜け出す方法

授業で話すときには、教師も生徒も基本的に英語だけ。
予習の必要がなく、辞書はなるべく引かず、全文和訳はなし、英文法解説もなし。
教科書を使わないときも多く、教師はできるだけ教えない……。

なのに、教えた生徒は
「ALTと英語で雑談」
「GTECのスピーキングテスト満点」
「大学進学後、クラスメイトにネイティブ講師との通訳を頼まれる」。

さらには、2013年度に国公立大学進学率で都立高1位になるなど、入試でも結果を残しています。

 タスクシラバスとか、行動中心アプローチとかいう名詞は出てこないのですが、説明から見ると、やっていることは近いのかなと。

 私自身は、文型シラバスでなければ(今の知識を試す形式の)テストで点は取れないと思っていますが、それを覆す可能性があるとすれば、試してみたいです。

 

 

 長文ですが、最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。いろいろ情報交換しましょう。

 では、また。